生き物の命を奪う風船
イベントやショッピングモールなどで手渡される風船。
海外では、ウェディングやセレモニーで盛大に風船を飛ばすイベントがよくあるんだそう。
手を離すとどこまでも飛んで行って、いずれは自然の中に落下します。

photo by John Vonderlin (CC BY-NC 2.0)
環境問題を考えて、最近では生分解性の風船が使われている場合があるそうですが、分解される前にイルカやクジラ、ウミガメ、海鳥などが間違って食べてしまいます。
食べるとどうなるかというと、胃や腸で詰まり、飢餓状態になって死に至ります。
特にウミガメはクラゲが大好物。海の中をフワフワ漂う「ビニール袋」や「風船」をクラゲと勘違いしてしまうんだそうです。
あと、風船の「ひも」も厄介なもの。アザラシは好奇心旺盛なので、おもちゃにしているうちに絡まってしまいます。身動きが取れなくなった動物は、自由に餌を採れないため衰弱したり、天敵から逃げきれずに命を落としたりします。

photo by U.S. Fish and Wildlife Service Headquarters (CC BY 2.0)

photo by U.S. Fish and Wildlife Service Headquarters (CC BY 2.0)
海の中での生分解は数ヶ月〜数年
いくら「天然ゴム100%の生分解性バルーン!環境にやさしい!」とうたわれていても、こうしたことで海の生き物は死んでいるんですよね…。
さらに、生分解性の評価は、大抵「土の中に埋めて」行われます。
土の中と海の中では、全然環境が違うのはわかりますよね。
海の中は温度が低いし、酸素も少ない。土の中と同じように分解できないんです。
それに、風船ももちろんプラスチック。紫外線や熱で粉々になって、マイクロプラスチックになります。
Learn more!
一度だけ風船飛ばしをした過去
ちなみに1980年代後半、当時小学生だった私は、一度だけ風船飛ばしをしたことがあります。
授業の一環で、「風船に手紙をつけて飛ばしてみる」というもの。学年全体でやったので、多分120~140個くらいの風船が運動場から一斉に放たれました。
環境問題のことは、あまり話題になっていなかった時代。今では考えられない授業ですよね…。
私の風船は、隣の県の山郷へ。直線距離だと100km弱飛んだことになります。
拾ってくれたのは、その町に住む同い年くらいの女の子。田んぼにしぼんだ風船が落ちていたのを見つけて、拾ってくれたそうです。
ということは、多分どの生き物も傷つけずに落下したのかな…と今になって思います。
その子とは、それをきっかけにしばらく文通をしたのは懐かしい思い出です(どうしてるかなぁ)。
風船飛ばしの規制
日本のガイドライン
日本バルーン協会は、風船飛ばしについて次のようなガイドラインを出しています。
- ヘリウムガスを使用すること。(水素ガスはだめ)
- 天然ゴムの風船であること。マイラーバルーン(金属箔の風船)や自然界で生分解しないものは飛ばしてはだめ。
- ゴム風船の留め具は、プラスチックなど生分解しないものを使ってはいけない。ゴム単体で縛ること。
- 糸など持ち手を付ける場合、風船と同程度の生分解性を有すること。(木綿、輪ゴムなど)
- ゴム風船は必ず単体でリリースすること。集合体にしてはダメ。
飛ばしてもいい風船は生分解性のある天然ゴムとしていますが、海や川に着水した時のことを考えているのか、極めて謎です。
日本バルーン協会の公式サイトにある「ゴム風船についての研究と報告」を見ても、「風船飛ばしをしても自然界にはほとんど影響がない。無視できるから問題ない。」という見解ばかりが目立ちます。
欧米では?
イギリスでは、風船飛ばしへの反対運動が起こっています。
海洋保護協会(Marine Conservation Society: MCS)がビーチでの漂着ごみを調査したところ、1996年から2009年の間に、ゴム風船が約3倍に増えていると報告しています(MCSUK)。これをきっかけに、MCSと生物学者たちが風船飛ばしに反対。「Don’t Let Go!」というリーフレットを発行して広く呼びかけています。
そのほか、アメリカ、オーストラリア、シンガポールでも、数量規制や罰則などの条例を設ける州や都市があります。
日本って、「臭いものには蓋」なんですかね…。
使い捨てストローを廃止(削減)する自治体や企業が日本でも続々出てきていますが、次のターゲットは「風船飛ばし」なんてことも、ありえるかもしれません。