海洋生物はプラスチックごみを食べて死んでしまいます
上の映像は、ウミガメの鼻の穴からストローを取り出している様子を映したものです。
(ちょっとショッキングな映像なのでご注意ください)
ウミガメの研究をしている生物学者が、一匹のウミガメの鼻の中に、何かが詰まっているのに気付きました。
引っ張り出そうとすると痛がるウミガメ。なかなか抜けない…。優しく言葉をかけつつも、プラスチックのストローに憤りを隠せない生物学者さん。
格闘の末、10cmほどのプラスチックのストローが出てきました。(ウミガメは無事に海に帰っていったそうです)
なんでこんなことに。
おそらく、餌と一緒に間違ってストローを飲んでしまい、吐き出そうとして失敗したのではないかと見られています。
もしずっとストローが入ったままだったら、息苦しくて十分に動けず、餌を取ることもできなくなって死んでいたかもしれません。
このウミガメだけではなく、海洋生物がプラスチックごみを誤って食べ、死んでしまう例はあとを絶ちません。
●ビニール袋はクラゲやイカに見えます
海の中を漂うビニール袋。フワフワ、ぷかぷか、泳ぐように漂います。
何かに似ていますね。そう、クラゲやイカです。
ウミガメはクラゲを食べます。イルカはイカを食べるそうです。
間違ってビニール袋を食べてしまったウミガメやイルカは、どうなってしまうのでしょうか。
大量に誤食すると、満腹で本来のエサを食べることができなくなります。
胃袋が詰まり、破裂して死んでしまう場合もあります。
腸で詰まると腸閉塞が引き起こされ、エサを食べられなくなって餓死します。
いずれも、生死に関わる事態に追いやられるのです。
下の動画は、アオウミガメがビニール袋を誤食する様子をとらえたものです。
海の中では、このようなことが日常的に起こっています。
●プランクトンが付着したプラスチックごみを、エサと勘違いします
海の中には、プランクトンがたくさん住んでいます。そして、そのプランクトンをエサにする生物もたくさんいます。
プラスチックごみにプランクトンが付着すると、それはもうエサです(ニセモノの!)。
また、他の小さな生き物がプラスチックごみに卵を産み付けることもあります。その卵を食べようと、プラスチックごみと一緒に飲み込んでしまうのです。
鋭利なプラスチックならば、消化器を傷つけるでしょう。
(想像してみてください。ガラスのように尖ったペットボトルの破片を飲み込んだらどうなるか…。)
さらに悪いことに、プラスチックにはその製造過程で使われる添加剤を大量に含んでいます。添加剤の中には、毒性のある化学物質が含まれていることがあります。
プラスチックの誤飲・誤食によって、そういった化学物質が体内に取り込まれてしまいます。
●海鳥もプラスチックごみを食べています
海鳥は、プランクトンの匂いがする場所にはエサとなる魚がいることを知っています。
なんと海のプラスチックごみは、「プランクトンの匂い」を発していて、そこに海鳥が引き寄せられます。
特にミズナギドリ目の海鳥が、誤ってプラスチックごみを食べてしまっていることがわかっています。なぜならミズナギドリ目の海鳥は、嗅覚が鋭く、海の水面近くにいる獲物を食べる習性があるからです。
沈むことなく海面近くを漂うプラスチックごみは、こういった海鳥にエサと間違えられやすいのです。
海鳥のヒナもプラスチックを摂取しています。
親鳥は、飲み込んだエサを吐き出して、ヒナに与えます。その中にプラスチックが紛れていて、ヒナが食べてしまいます。
ヒナは胃の中に溜まったプラスチックを吐き出すことができず、死んでしまいます。
もっと詳しく!
【なんでプラスチックごみは、プランクトンの匂いがするの?】
「プランクトンの匂い」というのは磯臭い海の香りのこと。その正体は、「硫化ジメチル(DMS)」という成分。この成分がプランクトンから発せられ、海の上に放出されます。
プラスチックごみにはたくさんのバクテリアが付着します。このバクテリアも硫化ジメチルを発するのです。
その結果、海鳥は「プランクトンの匂い=獲物がいる!」と勘違いして寄ってくるのです。
アイキャッチ画像:photo by U.S. Fish and Wildlife Service Headquarters Follow (CC BY 2.0)